セカンドインパクトなるものが発生してから、15年が過ぎた。

現在でも何が起こったのか判明していないが、

全世界の政治、経済、産業、その他、すべてが白紙の状態になってしまった。

貧富の差は瞬く間に拡大し、ごく少数の支配層が国や人種を超えた、

新たな社会を形成したのだった。

これはそのような時代に出逢った、少年と少女の物語である。

 

The Island of Eden

〜 第1話 〜

 

 

 

「お〜い!碇シンジが来ましたよ〜!」

 シンジは海岸まで打ち寄せられたゴムボートの上に立って叫んだ。

「おかしいな。迎えがいないよ」

 迎えがいるわけがない。

 セカンドインパクト以降、島に居住するものはほとんどいない。

 従って、世界中のネットワークを誇る、碇財閥も出張所の必要は全くないのである。

 そんなことをシンジが知っているはずはない。

 なんたって、天下御免のボンボンなのだから。

「う〜ん、どうしよう…」

 ゴムボート上のシンジは腕組みして、首を捻っている。

 早く上陸してくれないと、話が進展しないので作者が大変困る。アスカが出てこられないじゃないか!

 

 作者の意向を受け取ってくれたのか、シンジはようやく海岸からジャングルへと足を進めていた。

「碇コーポレーションの人はいませんかぁ?変だなぁ…うん、ここの所長はクビだな」

 そんな者がいるならすればいい。シンジ様よ。

「でも、お腹がすいたな。レストランはどこだろ?」

 あるはずのないレストランを求めてシンジは歩く。

 ただし、ひ弱な彼のこと、5分も歩けばもうくたばってしまう。

 倒木に腰掛けて、肩を落とし、シンジは考えた。

 僕はどうしたらいいの?

 

 1時間もそうしていただろうか?

 考え込んでいたわけではない。

 お腹が減って動けないのだ。

「どこかに…食べるものないのかな?」

 ありますよ。あなたの頭上に美味しそうな果実がたわわに実ってます。

 いつもカットされたフルーツばかり食べているから気付かないのです。

「はぁ…僕は飢え死にするのかな…」

 太陽は西の海にその姿を隠し始めている。

 密林はオレンジ色に染まりだし、時間とともに影の部分が濃くなってきた。

 太陽が沈むと真っ暗になるという事実を知らない、

 シンジは何も手を打たないままただボゥッと座ったままであった。

 そして、1時間後。

 月明かりだけとなったジャングルの中を明かりを求めて走り回っている、彼の姿があった。

「誰か、助けて!電気を点けてよ!」

 

 翌朝、シンジは木陰に丸くなって眠っていた。

 幸いにもこのジャングルには猛獣はいなかったようだ。

 いれば…、

 この物語はその瞬間に終わっていただろう。

 碇シンジ、生きていくすべは知らないが、運だけはいい。

 その運の良さがこの状況でも発揮されていた。

「ふぁぁ〜」

 この危機感の全くない、大きな欠伸とともに、彼は目覚めた。

 その彼の目の前に置かれている、パパイヤに似た果実が3個。

「あれ?こんなのここにあったっけ?まあいいか。それよりお腹減ったなぁ」

 目の前の果実を食べるという発想は、彼には全く出てこないようだ。

「喉も渇いちゃった。ミネラルウォーターはないよね…」

 シンジ様も、少しは成長したようだ。ジャングルにそんなものはない。

「生水でもいいや。水道はどこだろ?」

 前文訂正。

「でもなんだろ?いい匂いがするな…」

 果実は発する甘い香りにようやく気付いた、シンジがその一つを手にとってみた。

 直接齧り付くほどの丈夫な歯はしてないが、手近な石で割ればいいだけだ。

 シンジは散々首を捻った末、せっかくの果実を地面に置いた。

「あ〜あ、美味しい果物が食べたいな…」

 そのとき、森の奥から大きな声が響いた。

「アンタ、馬鹿ァッ!」

 

第1話 −終−

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<あとがき>

 第1話です。まだ、アスカ出てません。声だけです。
 大丈夫。次回こそ出てきます。きっと…。

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